経営効率 business efficiency 2003 8 6
経営効率というテーマで、悩ましいテーマがありました。
これは、建設業界における「経営効率と利益配分」というテーマです。
今は、どうなっているか知りませんが、かつては、以下のとおりだったのです。
公共工事の工事金額に応じて、建設会社の経営規模に応じて、
公共工事を発注するというシステムでした。
単純化して、説明すると、こういうことです。
(あくまでも、金額や資本金は、事例として、わかりやすくしたものです。
実際には、経営規模を複雑に分析して、分類しています。)
公共工事の工事金額が、1000万円以下なら、
資本金1000万円以下の建設会社に発注する。
公共工事の工事金額が、5000万円以下なら、
資本金5000万円以下の建設会社に発注する。
公共工事の工事金額が、1億円以下なら、
資本金1億円以下の建設会社に発注する。
つまり、工事金額が小さいなら、小さい建設会社に発注し、
工事金額が大きいなら、大きい建設会社に発注するというシステムです。
これは、限られた市場で、利益を分配してきたシステムです。
建設という市場において、いわゆる住み分けをしてきたのです。
建設業界ですと、一般の人には、わかりにくいかもしれませんので、
パソコン業界で説明すると、このようになります。
パソコンの値段が、10万円以下のパソコンは、
資本金が1000万円以下のパソコン会社が発売する。
パソコンの値段が、15万円以下のパソコンは、
資本金が5000万円以下のパソコン会社が発売する。
パソコンの値段が、20万円以下のパソコンは、
資本金が1億円以下のパソコン会社が発売する。
パソコンの値段が、20万円を超える場合のみ、
資本金が1億円を超えるパソコン会社が発売することができる。
このようにすれば、パソコンの安売り競争はなくなります。
また、パソコン市場の秩序が保てます。
つまり、建設業界は、競争や安売りは、やめて、
秩序と安定を選んでいることを意味します。
悪く言えば、無競争なので、経営努力は不要で、価格も高値安定となります。
つまり、経営効率が悪いままとなります。
建設業界に、競争原理を導入し、経営効率を向上させるか。
建設業界に、秩序を導入し、安定を図るか。
これは、むずかしいテーマです。
競争させて、発展させるか。
秩序を確立し、停滞はするが、安定を目指すか。
どちらも、長所、短所があると思います。
どちらを選ぶか、選択していかなければならない時代にきています。
銀行業界も、同じような構造でした。
都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫、労働金庫、農協、信用組合など、
大きな金融機関から、小さい金融機関まで、星の数ほどあり、
秩序と安定を求めて、金融市場を上手に住み分けしていました。
しかし、これでは、経営効率が悪いと言うことで、
金融の自由化が求められています。
つまり、いつまで経っても、経営改善が進まないので、
金融の自由化が推進されたとも言えるでしょう。
何年か前に、金融ビッグバンが議論になりました。
しかし、金融ビッグバンの前に、建設業界のビッグバンを議論すべきだったのです。
しかし、なぜか、このテーマは、意図的に避けたような感じでした。
しかし、日本が、土建国家のままでいるか、産業立国になるか、
重要なテーマだったのです。
金融ビッグバンより、建設業界のビッグバンの方が、政策的には、優先度が高かったのです。
要するに、肝心な問題を先送りしてきたのです。